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年間30万人ががんで命を落としている。また、生涯のうちにがんになる可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人と言われています。

そして、日本人の死因の第一位になっているというがん。1981年にはじめて死因第一位になってから増え続けています。がん=治らないというイメージが強く、悲観的な考えが根強く残っています。

しかしこれは間違った認識のようです。なぜなら、がんは早期発見・早期治療をすれば治る可能性が高い病気だからです。その治る可能性が高い早期発見。

それがたった一滴の尿で発見できるとしたらどう思いますか?

 

●線虫とは

「線虫」って聞いたことがありますか?聞きなれない方も多いと思いますので、デジタル大辞泉の解説を引用します。

「線虫」とは線虫網の袋形動物の総称で体はクチクラに覆われ、糸状・ひも状で、体長1ミリから数メートルに及ぶ。植物や動物に寄生するもの、土の中にすむものなどがある。回虫・蟯虫・糸状虫・根腐れ線虫・根瘤(ねこぶ)線虫など種類が多い。とありました。

この「線虫」と「がん」にいったいどんな関係があるのでしょうか。

実は、この線虫、がんを早期発見してくれるというのです。

 

●どれぐらいの精度があるの?

それでは診断精度はどのくらい信用できるのでしょうか?

九州大らの研究チームの胃がんや食道がん、前立腺がん、さらには早期発見が難しいと言われているすい臓がんなどを含む数十種類のがん患者の尿を用いた実験結果によると、線虫はそれらすべてのがんに反応を示しただけでなく、従来の検診では見つけることが難しかった、ステージ0やステージ1に属する早期がんも判別できる可能性が高いことがわかったそうです。

パーセンテージでいうとなんと95.8%だそうです。

ちなみに、血液から調べる腫瘍マーカーでこの実験の参加したがん患者を検査した結果、がんと正確に診断できた確率は16.2%~25%に過ぎなかったという事です。

線虫の診断精度の高さには期待が持てるのではないでしょうか。

 

●費用は?

いくら早期発見できるといっても費用が高くては誰でも利用できるということにはなりません。

しかし、この検査方法での費用は数百円程度ということです。精度だけでなくコスト面も優れているようです。しかも判定も一時間半程度でできるというから驚きです。

 

●どうやって受けられるの?

線虫はとても優れた嗅覚を持っていてがんを嗅ぎ分ける能力をもっているそうです。

だから、一滴たらした尿の匂いに線虫が好んで寄って行けば「がんの疑いあり」逆に嫌がって遠ざかるなら「がんの心配はない」ということになるそうです。

とても簡単な検査ですむようです。

 

●実用化(保険適用や医療機関で通常使用)されるのはいつ頃?

日本は先進医療国でありながら、がん検診の受診率は先進国と比べてかなり低くなっています。

その原因は現在のがん検診にあるようです。

現在のがん検診と線虫によるがん検査を比べてみましょう。

 

現在のがん検診

  • 費用が高い
  • 結果が出るまで時間がかかる
  • がんの種類ごとに異なる検査が必要
  • 検査によっては痛みを伴うものある

 

線虫によるがん検査

  • 費用は数百円程度
  • 検査結果が出るまで、1時間半程度
  • 一度の検査で様々ながんの診断が可能(今の段階でがんの種類は特定できないが、将来的には種類も特定できるように研究中)
  • 少量の尿を提出するだけで、痛みは伴わない

 

このように現在のがん検診のデメリットを線虫がん検査がすべて補っています。

この検査の実用化が実現すれば、日本のがん検診の受診率も大幅に上がることが期待されます。

それでは肝心の実用化はいつ頃になるのでしょうか。

診断法の保険適用は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の承認が必要になります。「生物診断」というのは前例のない手法である為に、承認までの時間はかかると予想されます。

線虫を使ったがんを早期発見する新しい手法を開発した九州大学の廣津崇亮助教は、この手法を事業化するスマートエレガンスというベンチャー企業を設立しました。国内の病院と臨床試験を進め、3年後の実用化を目指しているそうです。

この画期的な手法が実現すると一般の健康診断にも組み込まれる日がくるかもしれません。

様々な環境での生活において、抱えるストレスは多くなる一方という現在。がんの発症を完全に防ぐことは難しいかもしれません。しかし、この手法の実現によってがんによる死亡者数は大幅に激減することでしょう。がん=死という悲観的なイメージがなくなり、怖い病気をいう認識もなくなるかもしれません。

線虫によるがん検診。実用化に向けて期待せずにはいられません。